成績を上げたい受験生が陥る2つの誤解
多くの人が誤解しているのですが、成績を上げるために大事なのは「努力」ではなく「技術」です。
もちろん努力は大切ですし、ある程度の努力は大前提です。
ただ長年生徒の学習を見ていると
努力不足で成績が上がらない
という生徒よりも
努力の仕方が悪いから成績が上がらない
という生徒の方が圧倒的に多いです。
しかし多くの受験生はそれに気づかず
成績が上がらないのは努力が足りていないからだ!
と思い込んでとにかく学習時間を多く取ろうとします。
しかし質の低い学習を長時間やってもほとんど成果は得られません。
大切なのは「学習の質」であり、それを実現するための「技術」です。
ではその「技術」とは何か?
という話にもちろんなるワケですが、ここに受験生が陥りがちなもう一つの誤解があります。それは
「良い勉強法」という便利な「型」があって、それをそのまま実行すれば良い
という誤解です。もう少し具体的に言うと
成績が上がらない受験生ほど
英語ってどうやって勉強すればいいですか?
という質問をしてきます。
何か問題があるのか?と思う人もいるかもしれませんが、ここには大きな問題が隠れています。
この質問をする人は
・「正しい英語の勉強法」という普遍的な正解が存在し
・ 目の前の講師はそれを知っており
・ 自分もそれを知ればすぐに学習は改善される
と思っています。確かに認知心理学などの観点から見て「ほぼ万人に当てはまる学習法」というのは存在します。
それができていない生徒は入会したての段階で指導をして、学習法を矯正したりもします。
しかし、その次元で話をしていては受験では通用しません。「ほぼ万人に当てはまる学習法」というは基礎段階のみのお話だからです。
こういう考えをしている受験生は
学習とは技術である
ということを理解していません。
「学習は技術である」とは
「上手に学習する」ということも技術のひとつであり、
やり方を教わって次の瞬間実践できるようなことではないということです。
つまり、本当につけなければいけないのは
英語の力
ではなく
英語を学習する力
だということです。もちろん「英語」は単に例として挙げただけで、数学でも理科(物理・生物・化学・地学)でもどの科目でも同じです。
そして学ぶ力をつけるためにはとにかく
昨日(先週・先月)より上手になる
ということしかありません。スポーツと同じです。
・自分の学習の何が良くて何が悪かったのかを振り返り
・次はどう改善すれば良いのかを考え
・また実践してみて振り返る
というサイクルを回していくことしかありません。
このサイクルはビジネスの世界では「PDCAサイクル」と呼ばれています。
アカデミーでは単に成績を上げる・受験に合格するということだけを目指すのではなく
受験勉強を通じて社会に出てから使える力(=学ぶ技術)を身につける
ということを教育哲学としているので、生徒たちにはPDCAサイクルという名前で指導をします。
今回は生徒向けに作ったPDCAサイクルの説明をブログに載せてみます。
成績アップに悩む受験生や保護者の方、指導者の方などに参考にして頂ければと思います。
1.PDCAサイクルってなに?
PDCAサイクルとはビジネスの世界でよく使われる言葉です。
Plan(計画)、Do(行動)、Check(評価)、Act(改善)の頭文字を取ってPDCAと呼ばれています。
商品の品質を向上させたり、プロジェクトを上手く回して良い結果を残すために使われている手法です。
2.どんなふうに使わている?
例えばある工場では…
<Plan(計画)>
まず工場長はAランクの製品を月に2万個作るという目標を立てました。
その目標から逆算して一人の作業員が1日に100個の製品を作れば良いとわかりました。
そこで作業員ごとに1日のスケジュールを作成し、その通りに作業してもらうよう指示しました。
<Do(行動)>
作業員はその日のスケジュール通りに製品をつくります。
ちゃんと出来た日も、出来なかった日も、工場長に報告します。
<Check(評価)>
1ヵ月が経ちました。出来上がった商品を見てみると、1万8000個しか出来ておらず、しかもBランクの商品が2000個含まれていました。
工場長はなぜそうなったのか考えます。作業員にも聞いてみたりして、原因を見つけました。
商品の個数が足りなかったのは、まだ経験の浅い若手の作業員に1日100個の製品は作れない日があったからでした。
また、品質の低い製品が混ざっていたのは、ベテランの作業員がこっそり手を抜いて作ることがあったからでした。
<Act(改善)>
工場長は改善策を考えました。まず若手の作業員のノルマを1日80個に下げ、代わりに経験豊富な作業員に1日120個作ってもらうことにしました。手を抜いていたベテランの作業員には「品質の低い商品を作ると信用が下がって工場が潰れてしまう」ということを話してわかってもらいました。これで来月は目標が達成できそうです。
3.PDCAを勉強に当てはめると?
アカデミーでは生徒に1週間分の計画を立ててもらっています。
1週間分の計画(Plan)を立てて、その通りに実行(Do)してみる。すると上手くいく部分と上手くいかない部分が出てきます。
たいていは1週間ごとに授業があります。そこで1週間の計画が上手くいったかを評価し(Check)、改善点を考えて(Act)、次の計画に活かします。
これを繰り返していくことで1週間が上手く使えるようになります。
またウチの講師は「学習のプロ」ですから、みなさんの学習を見て「この学習はもっとこうした方がいいよ」とアドバイスをします。
場合によっては心理学講座みたいになりますが、「なぜその学習法が良いのか?」を正しく理解しておくと、他の科目の学習にも活かせるから説明します。
講師のアドバイスも受けながら、自分の学習がより良いものになるようにたくさん知恵を絞って下さい。
4.なぜPDCAを使うの?
アカデミーでは生徒に対してただ単に成績を上げて欲しいとは思っていません。
学校の勉強というのはみなさんの将来のためにやることです。将来社会に出てやりたいことができるように。
そして今社会は「めまぐるしく変化する時代」です。スマホの新機種は次々と発表され、毎年違うデザインの服が流行り、新しい技術は1年も経てば古い技術とされます。
そんな変化の激しい社会だと、そこで働く人たちも常に変化が求められます。1つの技術を身につけたから一生安泰とはなりません。常に新しいことを学び続ける必要があります。しかも厄介なことに、みなさんが社会に出る頃には単純な作業はロボットやAIが代わりにやってくれる時代になります。指示通りに完璧に動くだけであれば、ロボットやAIの方が適任です。その時代で必要とされるのは、自分の頭で考え、自分を常に変化・成長させることができる力です。
単に先生の言うことを聞くだけで成績を上げてしまった場合、確かに学校では褒められるでしょう。小学校で褒められ、中学校で褒められ、高校で褒められ、大学で褒められ、しかし社会に出た瞬間に「ウチは上司の言うことを聞くだけの人は雇いません」と言われてしまいます。「じゃあ学校って何だったんだ!?」と思いませんか?
既にそういう人は出始めています。有名大学を優秀な成績で卒業しているのに就職先が決まらない、あるいは一度就職は出来たけども周りのレベルについていけない。結局辞めてしまったものの、次の職場が見つからない…。
一方でこれまでは評価されなかった人たちが評価され始めています。
「ウチの会社はここがおかしいんじゃないか?もっとこうした方がいいんじゃないか?」
こんなことを言う人は、昔は「組織に逆らう人間」として低い評価を受けていました。しかし今は逆です。自分の意志で発言をする人を評価する会社が増え、そういった新しい体質の会社がどんどん古い体質の会社を倒していっています。
ちなみにこのような変化はスポーツの世界にも起きています。昔は指導者の指示に完全に従うのが選手という立場でしたが、今は選手が自分でトレーニングを考え、指導者はそこにアドバイスをするという形が多くなっています。PDCAはビジネスの言葉で、スポーツ界でこう呼ばれることは少ないのですが、中身としては同じことをしています。
アカデミーでは生徒たちが社会でやりたいことができる人生が送れるようにと願っています。そのためには自分の頭で考え、自分自身を成長させる力を身につける必要があります。だから成功している多くのビジネスマンやアスリートの著書や理論書を分析し、みなさんにも使いやすいようにアレンジしたPDCAの技術を指導しています。全ては成績を上げるためではなく、社会に出た時にやりたいことをやれるためです。成績はあくまでそのための手段に過ぎません。
アカデミーで勉強をする以上は、学校や成績はあくまで自分の人生のための道具だと思って下さい。決して大人の指示を鵜呑みにすることはせず、自分の頭で考えることを基本だと思って下さい。PDCAはそのために教える技術です。