指導は観察から始まる

ウチの指導は地味ですが全く新しい指導スタイルを作り上げ、実践しています。

大学生講師は元生徒がそのまま講師として採用されるケースが多いのですが、講師に採用されて一カ月ぐらいで全員が言うのが

先生たちがこんな難しいことをやってるとは思わなかった…!

というセリフです。

何せ見た目が地味ですから、あまりすごいことをやっているとは思われません。

しかもウチは「生徒が主体性を身につける」ということを指導目標にしているので、講師はわざとあまり目立たないようにしています。

バレないようにサポートする

という感覚です。だから生徒から講師になると、そのギャップに愕然とします。

ウチは講師研修に圧倒的なエネルギーを使っていて、新人でもベテランでも関係なく、授業をしたら必ずその日の指導の振り返りをして、反省点を洗い出します。先輩講師からアドバイスも受けて

次の授業ではこういう点を改善していこう

というミーティングを必ず行います。それを毎日積み重ねるワケですから、数か月経ったときの講師の力量には研修を行わない塾とは歴然の差がついています。

今回はその研修内容をざっくりですが紹介してみたいと思います。

まず、ウチの指導は観察→提案→支援→確認という4つのフェーズで成り立っています。

 

この4つの中で新人に最初に教えるのが「観察」です

「指導は観察から始まる」

というのはウチの全ての講師が基本のキとして認識していることです。

観察の質が低いとその後の提案→支援→確認という3つのフェーズ全てにおいて質を落としてしまうため、ここのクオリティにはかなりのこだわりを持っています。

 

学習の質を決める3つの要素

観察のフェーズは以下の3つの項目に分けてかなり細かく観察します。

1.メンタリティ(精神性):勉強へのやる気や粘り強さなどの心理面

2.ベース(基礎力):計算力や読解力といった勉強の基礎になる力

3.スキル(学習技術):記憶法や理解力などの勉強の上手さ

この3つです。

勉強が苦手

一人では何をしていいかわからない

頑張っているつもりでも成績が上がらない

といった状況に陥っている生徒はこの3つの要素の少なくともどれか1つが欠けています。(ウチの講師の仕事は生徒の学習に欠けている要素を見抜いて、それを埋めるべくサポートをすることです)

 

これからこの3つの要素をさらに詳しく解説していきます。

本稿の最後には各要素が欠けると学習にどんな支障をきたすかをパターン別にまとめていますので

成績が思うように上がらない受験生

我が子の学業に不安を感じる保護者の方

指導が思うようにいかない指導者の方

は是非参考にして頂ければと思います。

 

メンタリティ(精神性)の観察

メンタリティとは勉強に向き合う際の心の状態のことです。

よく仕事やスポーツでも

「あいつはメンタルが弱い」

「彼のメンタリティは素晴らしい」

といった表現が使われます。

トップアスリートや素晴らしい指導者ほどメンタリティの重要を語ります。勉強の世界も同じです。実力のある先生ほどメンタリティの重要性を生徒に説いています。

一方であまり突出していない選手(生徒)や指導者は

「そんなの成績が上がるかどうかに関係あるの?」

といった疑問を持つことも少なくありません。

それはおそらくメンタリティが単なる「根性論」だと思われているからだと思います。

学習におけるメンタリティはもう少し具体的で科学的です。

ウチではメンタリティの中でも以下の観点を重視して観察しています。

・GRIT(やり抜く力)

・メタ認知能力(自分を観察する力)

・主体性(自分から動く力)

・チャレンジ精神(困難にぶつかっていく力)

もう少し詳しく書くと

・難しい問題でも諦めずに考え、試行錯誤を続ける

・自己分析をしっかりとして、自分の得意や苦手を細かく把握している

・講師の指示を待たず、自分でやるべきだと思う勉強に取り組む

・やったことがない問題やハイレベルな問題にも積極的に挑戦する

ということです。こうやって書けば

そりゃあ、こういう人は伸びるだろうね

と思うはずです。こういったメンタリティは全ての学習を支える要素です。

講師は質問したり学習の様子を観察したりすることで生徒がこれらのメンタリティを備えているかを確認します。

ベース(基礎力)の観察

ベースとはスポーツにおける基礎体力(筋力や持久力)にあたります。

そもそもの運動能力が高い人は未経験のスポーツに挑戦したとしてもすぐに上達して戦力になりそうなイメージが持てると思います。

勉強にも同じことが言えます。勉強におけるベース(基礎力)とは

・読解力(文章を速く正確に読める)

・語彙力(たくさんの言葉の意味を知っている)

・計算力(計算を速く正確にできる)

・思考力(論理的に秩序立てて考えることができる)

・教養的知識(社会や科学などについての教養としての知識量)

です。これらは書き並べるだけで学習に大切だと一目でわかります。

こういった要素も学習を通して、また他愛もない会話の中で講師は観察をしています。

 

スキル(学習技術)の観察

スキル(学習技術)とはこの概念自体があまり知られていません。

「わからない」に対して自らアクションを起こすこと

にも書きましたが

理解力=「わからない」を「わかる」に変える力

にも技術があります。理解力がある人は無意識的にこの技術を駆使しているに過ぎません。

記憶力も技術です。こちらは「〇〇記憶術」といったフレーズを巷でよく耳にします。中には眉唾なものもありますが、ちゃんと脳科学的・認知心理学的に「良い記憶法」というものは存在します。

 

つまり学習は「うまくやる」ことが可能だし、重要だということです。

ちなみに塾に来る前から学習が上手い生徒もいます。こういった生徒は

ただ言われた勉強をする

ということだけでなく、その中で自分を観察しながら試行錯誤を繰り返してきています。

もっとこうした方がよく覚えられるんじゃないか?

ノートの取り方をこう変えてみたらどうだろう?

前のテストではこういうやり方で上手くいったけど、

次のテストではどうだろう?

といった具合です。こういうタイプの生徒はその努力の仕方を「フツー」だと思っているので、友達に

なんでそんなに成績いいの??

どうやって勉強しているの??

と聞かれても

いや、フツーにやってるだけだけど…

と答えることが多いです。つまり自分の学習技術について無自覚なことが多いということです。

 

講師は学習の様子を見たり、質問をしたりする中で

この生徒が無自覚に使っている技術は何か?

この生徒が意識的に使っている技術は何か?

この生徒が使えていない技術は何か?

を観察し、次の「提案」のフェーズに繋げていくのです。

 

3つの要素のどれかが欠けてしまうと…

最後にこれら3つの要素のどれかが欠けてしまうとどうなるかを紹介します。

自分自身が、我が子が、担当生徒がどのパターンに当てはまるかを見てもらえれば、現状を打破する糸口になるかもしれません。

メンタリティに問題を抱えているパターン

メンタリティに問題を抱えているとはすなわち

・解けない問題に出会うとすぐに諦め、先生に質問しようとする

・自分の「できる・できない」を把握できていない

(この問題は解ける? と質問すると わからない と言う)

・自分のやるべきことを自分で見つけられず、指示待ちになる

・やったことがない問題はまず解説を聞いてからやりたい

という状態です。こういった傾向がある生徒はメンタリティの部分に課題があります。

こうなると誰かに丁寧にレールを敷いてもらう(解説・指示・質問対応をめちゃくちゃ丁寧にやってもらう)状態でなければ勉強が成立せず、ほとんど進まなくなってしまいます。

この状態になってしまう原因としては、周りからの過度な期待やプレッシャーが挙げられます。

このタイプには小学校までは勉強が得意だったが、中学(や高校)に入って周りからのプレッシャーによって学習への意欲をなくしてしまい、努力をやめてしまうというケースが多いです。

ベースが不足しているパターン

ベース(基礎学力)が不足しているとはすなわち

・教科書の音読がたどたどしい

・本や教科書にたびたび知らない言葉が出てくる

・計算が遅い/ミスが多い

・パズル的な問題が苦手(規則性を見つけるなど)

という状態です。

この状態だといくらやる気になって、学習法を先生に教えてもらったとしてもなかなか勉強が進みません。

数学であれば計算ミスを連発して直すのに時間がかかったり、理科や社会であれば教科書やワークの解説を読むだけでかなりの時間とエネルギーを使ってしまい暗記に回す時間がなくなってしまったりします。

こういうタイプの生徒は「面倒くさい」への耐性が低く、地味なトレーニングを嫌います。

このタイプは個別指導塾などに行くと

自分で理解しなくても、先生がわかりやすく噛み砕いてくれる

知らない言葉は先生が知っている言葉に置き換えてくれる

計算などの勉強は宿題に回り、授業では理解を要求される問題を扱う

(そして宿題はやらない/やっつけになる)

わからない問題は先生が解説してくれるので深く考える必要はない

という状態になり、なんと「授業が成立している」かのように見えてしまいます。

実際は先生がめちゃくちゃ頭を回しているだけで、生徒本人のトレーニングにはあまりなっていないので注意が必要です。

スキルが欠落しているパターン

スキル(学習技術)が欠けているとはすなわち

・暗記などの単調な学習にやたらと時間がかかる

・一度学習したことを数週間で忘れてしまう

・応用問題や派生問題が解けない

という状態です。こういう生徒は

・成績が落ちるとガッツ(学習量)で取り戻そうとする

という傾向も見られます。

これは脳の仕組みや個性にあった学習法が選択できていなかったり、理解するための技術や思考するための技術を習得していないために起こります。

中学までの勉強ではスキルがなくても高得点は取れるのですが、高校になると途端にスキルの差が表れてきます。

負の連鎖が起こっているパターン

成績が低迷して個別指導塾に訪れる生徒としてはこのパターンが一番多いです。

負の連鎖のきっかけになる要因は様々ですが、例えば

基礎トレーニング(音読や計算)を面倒臭がって真剣にやらない



勉強に時間がかかったり、発展的なことが理解できない



勉強に対するやる気(GRITや主体性、チャレンジ精神など)をなくす



勉強に対して試行錯誤をしなくなりスキル(学習技術が身につかない)



勉強の習得速度を落とし、余計に基礎力もつかない



以下繰り返し

という循環です。今回は「基礎力トレーニングを面倒臭がる」をスタートにしましたが

「いい点を取って当たり前」

というプレッシャーが強すぎて勉強に対するやる気を失う

(メンタリティの要因)

「もっと良いやり方を模索しよう」

という発想を持てず、同じ努力の仕方を繰り返す

(スキルの要因)

などがスタートに来ることもあります。

この連鎖になってしまうと回復には時間がかかるケースも多いです。

3つの要素のバランスを見ながら全体的に少しずつ上げていくイメージで、成功体験を積み重ねることで改善していくしかありません。

 

成績が上がらない要因は様々

ここまで長々と見てきた通り、成績が上がらない要因は様々です。

ですからウチの講師は生徒の学習の様子や会話の内容をつぶさに観察し、何が問題なのかを見つけ出そうとします。

この判断を適切にできればその後のトレーニングの提案も的を射たものになり、ペースは生徒それぞれではありますが、学習は必ず改善へ向かっていきます。

 

補足

今回の記事で「成績が上がる/成績が上がらない」という表現をよく使いました。

これはホームページを訪れてくれた方がウチの塾生ではないことを想定して、わかりやすくするために使っている表現です。

実際の指導ではウチは「成績を上げることそれ自体が目的ではない。大人になっても勉強を続けないとすぐに置いていかれる世の中になった。君たちが目的とすべきなのは大人になった時に一人で勉強できる人間になること」と伝えています。

記事中でここまで書くとややこしくなってしまうので、単に「成績を上げるためには…」という表現で簡略化しています。