夏期講習が忙しすぎてブログをアップする目標が全く達成できる見込みがなく、でも目標達成できないのは嫌なので苦肉の策として講師研修用の文章でそれっぽいヤツを載せてお茶を濁すという試みです。以下は当会の講師向けに配信している文章をそのまま載せたものです。
『フランス革命の省察』
「保守主義」の古典と呼ばれる名著です。
前々から読みたいと思っており、ようやく読むことができました。
1789年に書かれた本で、まさに当時起こっていたフランス革命を徹底的に批判した内容になっています。
著者のエドマンドバーク氏はイギリスの政治家であり、ざっくりとした内容としては
「今の(フランス革命期の)フランスは安易な革命に飛びつきすぎで、もっと伝統を重視したイギリスを手本とすべき」
といった感じです。形式的な表現をすれば革命を推し進めようとする「急進主義」を批判し、伝統を重視し慎重な修正を重ねようとする「保守主義」を推す内容ということになります。
生徒の精神面を重んじた指導を信条とする私としては、ぜひ皆様に読んでもらいたい内容です。
というのも、今の日本はとにかく「変化」が大好きで、事態を「改善」することに躍起になっているように見えるのです。特にニュースにもなるような大企業はまさにメディアや株主に「どう成果(変化の結果)を見せるか」ばかりに注力しているように見えてしまいます。そこでは「数字」というわかりやすい成果が大きすぎる意味を持ってしまいます。ビジネスの最前線で戦っていらっしゃる方々には「甘い」と評されてしまうかもしれませんが、私は単純に
「この空気感の中で働くのは(精神的に)キツイだろうなぁ」
と思ってしまいます。
増加するうつ病患者や自殺者などは、単に「今時の若者はメンタルが弱い」という言葉で片付くものではなく、このような時代背景にも影響されているのではないかと思うのです。
本書でバーク氏の語る「保守主義」に完全に賛同するわけではありませんが、今一度、「本当に追い求めるべき価値とは何か?」を問い直す意味でも一読の価値があるかと思います。
『フランス革命の省察』(補足)
前回紹介した『フランス革命の省察』ですが、生徒のメンタル面との関連性が少し説明不足だったかと思い、補足することにしました。
私の伝えたかったことは
①今の社会は急進的な変化ばかりを好み、そのわかりやすい指標としての「数字」を追うことに躍起になりすぎている
②そのような社会で(特に一番下っ端として働く)若者たちは精神をすり減らし、うつ病患者や自殺者を出してしまっているのではないか
③社会の空気感は教育へも影響を及ぼしており、教育の世界でもやはりテストの点数や偏差値などが価値を持ちすぎている
➃企業で働く若者と同様、③のような教育観の中で育つ子供たちもやはり、精神をすり減らしたり、歪んだ価値観を持つ危険性が高い
ということです。
またメンタルを話題にするときに頻出の
「今時の若者はメンタルが弱い」
という言葉ですが、私は個人的には
「そうは思わない」
という立場です。
というのも、日本には高度経済成長期やバブル期など、明確に豊かになる社会を想像しやすい時期がありました。その空気感の中では身を粉にして働いたり、数字や競争を重視することにも希望が見出しやすいでしょう。周りには欧米という目標もありました。
しかし一通りの発展を遂げてしまった今の日本で当時のような展望を持つのはとてもハードルの高いことです。
「身を粉にして働いて、数字を追って競争に勝って努力を続けた結果、果たして自分の人生はどのように豊かになるのか?」
この問いに自分なりの答えを出せる、つまり自分の将来に対して、競争社会に身を置いてでも手に入れたい希望を抱くことができるのは、相当能力の高い人か独創性・想像性に富んだ人でしょう。
将来についての希望は見いだせない中、数字などの無機質なものを追い求める努力をしてしまっては、心が持たないのも当然のことでしょう。
以上で補足は終わりです。あとはみんなで『フランス革命の省察』を読み、改めて倫理観や品格といった数字では測れない、「わかりにくい価値」について考えてみましょう。