今回は高校数学の参考書を紹介します。
といっても、今は「高校数学 参考書」と検索すればオススメ本を紹介しているサイトがいくらでも出てくるので、僕のこの記事は少し趣向を変えています。

これは数学以外にも言えることですが、そもそも勉強が上手くいかない原因が教材であるケースはそこまで多くありません
さらに言えば成績が上がった要因が教材であることもそこまで多くありません

あまりに不適切な教材を使用していない限りは単純な学習時間の問題か、学習法の問題であることがほとんどです。

特に数学に限って言えば、学校で購入している教材があればほとんどの学習は成立してしまいます。
入試のために特に買うべきと言えば志望する大学の過去問と、共通テストを受けるなら共通テスト用の問題集ぐらいです。

ではなぜ参考書のまとめ記事を書くのかと言うとオススメして買ってもらうためではなく、理解して使ってもらうためです。
参考書にはどんな種類があるのかを知り、それぞれの特徴を知ることで自分が使っている教材を正しく活用することに繋がります。

もちろん中には手持ちの教材に不適切なものしかない人もいるでしょう。
そういう人は各種類ごとにオススメの本(の一例)を紹介していますので参考にして下さい。

①教科書傍用

反復     
網羅性    
わかりやすさ 
実践     

教科書傍用問題集とは学校の教科書と対応するように作られた問題集

こんな感じのヤツです。
多くの学校で年度の最初に配られるはずです。

このタイプの特徴は反復です。
ほとんどの問題集は

こんな感じで問題ごとに一つの解法が解説されます。つまり
・今解いている問題と、さっき解いた問題では解法が違う
・ひとつの解法を1回しか学習できない

ということです。一度で理解して習得できるタイプの問題なら良いですが、何度も練習して手に覚えさせなければいけないタイプの問題では練習量不足になるケースがあります。

ですが教科書傍用問題集では、反復が必要な問題に対しては

こんな感じの構成になっていて、ひとつの解法を何度も反復練習させてくれます。
図では3問としましたが、大抵6~12問ぐらいあります。

なので計算力を強化したり、基本解法を定着させるのに優れています
特に三角関数・指数対数・微積分・ベクトル・数列などはこれまでに経験していない計算方法を習得しなければいけない単元なので、このタイプの問題集が活躍します。

反面、解説があまり詳しくないので書かれていることが理解できない場合は後に紹介する解説型の問題集が1冊あると便利だと思います。間違っても「何言ってるかわからないから手順だけを丸ごと覚える」みたいなことはしないようにしましょう。
解説型で理解する⇒教科書傍用で練習する
という流れで勉強するとスムーズにいくことが多いです。

②網羅型

反復     
網羅性    
わかりやすさ 
実践     

網羅型というのは「入試によく出る問題は全部載せてやろう」みたいなヤツで、

こんなのです。代表格はやはりチャートでしょう。

見る者を怖気づかせるぐらいの分厚さがありますが、中身を全て習得できたとしたら入試で困ることはまずないでしょう。
単純に情報量として必要なことは全て書かれているので、この網羅型の問題集を一通り持っているのなら、後は使い方次第でほとんどの学習は成立します。

ただしそれは解説が理解できるということを大前提にしているので、ここでもやはり「何言ってるかわからない」という人は問題のレベルを下げる(例えば青チャートを黄チャートに変える)か、解説型の参考書を活用することを考えた方が良いかもしれません。
(先に紹介した教科書傍用問題集よりは解説に面積と文字数が割かれているのでわかりやすいとは思いますが)

また、「そもそも終わるのか?」ということも考えなければいけません。
かなり学習が上手い生徒なら1周するだけでも結構頭に入りますが、普通は2周以上しないと無理だと思います。1問に費やす時間を測定してみて(できれば数問やって平均値)、それに問題数を掛け算した時に許容できる時間に収まっているのかは考えてみる必要があるでしょう。

③解説型

反復     
網羅性    
わかりやすさ 
実践     

解説型とはわかりやすい解説をウリにしたタイプで

こんなのがあります。このタイプの本はものすごく種類が多いです。

もちろん特徴はわかりやすさです。
そもそも数学は理解しないと始まらない科目なので、学校の教科書や手元にある参考書・問題集の類に書かれていることが理解できない場合に使います。
逆に手元にあるもので理解できるなら特に必要はありません。

また、あくまで理解することが目的の使い方になるので、購入する人は同時に動画サービスの活用を検討しても良いと思います。動画は集中が切れやすかったり、学習のテンポが上がりにくいという弱点はあるものの、やはり音声情報が入ってる分わかりやすさの面では優れています。
Youtubeやスタディサプリなどの動画の方が理解しやすい人はそれでも良いと思いますし、人によっては解説型の本を進めていく中でわからないところだけ動画を活用するのも良いでしょう。

④入試演習型

反復     
網羅性    
わかりやすさ 
実践     

入試演習型とは基本の学習を一通り終えた人が入試に向けて実践練習をするための教材です。

代表例はこんな感じです。
主にレベルの高い私立受験か、国公立2次試験の対策に使います。

問題は主に有名大学の過去問から抜粋されており、実際の入試で出た問題の中から良問を集めたような問題集です。これまで紹介した3種類が「習得する」を目的にした教材だとすれば、このタイプは「習得したことを使いこなす」を目的にした教材です。

ちょっと使い方が難しいタイプで
・どこまで自力で考えるのか?
・最初のページからやるのか、自分の苦手なところだけやるのか
・そもそも過去問じゃダメなのか?

などなど、効果的な学習をする上で考えなければいけないことが結構あります。
レベル的にも使う人は限られると思いますが、使う人は自分のどんな能力を鍛えるためにこのタイプの本をどうやって使えば良いのかを考えるようにしましょう。

⑤単元型

単元型とはある単元に特化して理解・演習するための教材です。
すごく特殊なので星評価はナシとしました。

こういうのが代表例。

中でも
・基本はわかっているが、入試問題になると解けない人
に向けたものと
・そもそもその単元が基礎からわからない人
に向けたものがあります。

上に挙げた中では一番左が前者に、真ん中と右が後者に分類されるでしょう。

特定の単元のためだけに1冊のテキストを使うというのは結構コスト(時間とエネルギー)を割く行為なので、かなり極端にある単元だけが苦手という人が使うべきだと思います。

⑥過去問型

反復     
網羅性    
わかりやすさ 
実践     

言うまでもなく過去問です。あと、過去問につくりを似せた問題集もここに入ります。
実際に自分が入試で解く形式で練習するためのものです。

受験生が実際に受けるのは共通テストか各大学の試験の2種類なのですが、共通テストであれば

こんな感じのヤツで、
各大学の過去問なら

こんなのが代表例です。

もちろん実践練習が目的です。
・自分の弱点はどこか?
・合格点に達するために何が必要か?
・勉強したところは成果として出ているか?
・時間は足りるか?
・時間配分は適切か?

などなど、受験勉強をしていく上でめちゃくちゃ大切なポイントを測定するために使います。
大学受験は基本的に志望大学の過去問から逆算する形で進めていくので、こういう教材は絶対に必要です。

①②③のどれか(あるいは複合)でインプットして、過去問でアウトプットする。
課題点を見つけ出して、また①②③のどれかの教材に戻る。
ということを繰り返すだけで受験勉強として成立します。

最後に 教材に頼らず学習法を磨こう

繰り返しになりますが、学習の成功と失敗を分ける要因が教材であることは稀です。

しかも、考えてみて下さい。
皆さんは大学受験のあとも勉強を続けるわけです。
大学でも、社会人になっても勉強は続きます。

例えば社会人が受けるような資格試験を考えてみると、今の大学受験の参考書コーナーほど色々な種類の本が充実している資格試験などありません。大学受験参考書業界はある意味で異常に過保護です。

誰かのオススメ参考書を意味もわからずに買い漁り、万が一それで大学に合格できたとしても、その人が社会に出たらどうでしょう?
本屋さんの、大学受験コーナーに比べれば遥かに狭い本棚の前で、その人は自分の学習を成立させるための本を正しく選ぶことができるでしょうか?

だから、勉強が上手くいかない理由を教材に押し付けて参考書ジプシーみたいになる前に、自分の学習時間と学習法を見直して下さい。

僕は今社会人の学習サポートの仕事もしていますが、正しい学習法と基礎学力(特に数学と国語の力)さえ身につけていれば、たいていの資格試験なんて過去問があれば十分です。

少し難しいことかもしれませんが、ただ大学受験に受かることを考えるのではなく、社会に出ても役立つスキル(学習法)を身につけながら大学受験に受かることを考えて欲しいと思います。

この記事も魔法の杖を探すかのように参考書を選ぶために読まれるのではなく、
自分の学習と教材を見つめ直し、その意味と効果を考えるのに役立つことを願っています。