英文解釈って何?
英文を読むためには3つの力が必要です。
1つは語彙力。
一つひとつの単語(あるいは熟語)の意味がわかる力です。
2つ目が文法力。
英文を読む時に、例えば
これが主語だから「〇〇は」と訳そう
これは目的を表す不定詞だから「~するために」と訳そう
これは関係詞だから「~する人々」と訳そう
みたいに、文法に基づいて英文から情報を得る力です。
3つ目が文脈力。
lifeは「生活」と「生命」という意味があるけど、文脈的に今回は「生命」だろう
みたいな感じで、一つの英文でちゃんと意味が成り立つように(または文章中の前後関係で自然になるように)意味を決めていく力です。
語彙力・文法力・文脈力。
大雑把に言えばこの3つの力を駆使して人は文章から情報を読みとっています。
この3つの力はバランスが大切で、どれか一つが著しく欠けていたりすると、残りの2つがどれだけ高くても英語の成績は頭打ちになってしまいます。
だから英語の勉強はこの3つの力をバランスよく鍛えられるようにトレーニングを組むことが大切です。
そして英文解釈とはこの中の2番目、文法力を鍛える勉強です。
英文解釈は必要か?
受験生の中には英文解釈を軽視する人もいます。
英語なんて単語さえわかれば何となく読めるだろう
と思っている人です。
国語が得意な人に多くて、文脈力が高いために文法力が低くてもこれまで何とかなってきてしまった人たちです。
確かに中学~高1レベルぐらいの英文であれば実は文法力はそんなに要りません。
単語力と文脈力があれば読めてしまうでしょう。
でも、大学受験はそんなに甘くないので、そういう人はどこかのタイミングで壁にぶつかります。
それなりに内容が難しく、知らない単語を推測しながら読まなければいけない受験英語を単語力と文脈力だけで突破するのはかなり大変。
英文解釈も軽視せず、3つの力をバランスよくつけるようにしましょう。
英文解釈の前にやっておくべきこと
今回初回する本はかなり易しいレベルなので、英語が苦手な人でも大丈夫です。
ただ
・中学校の時から英語が苦手
という人は初歩的な英文法だけは軽く復習してから英文解釈の勉強に入った方がいいかも。
こういう本を使って1週間ぐらいでざっと基本を押さえなおしましょう。
(ここは短期間にしてしまうのがポイントです)
ではここから、英文解釈のオススメ本を紹介します。
1冊目:はじめの英文読解ドリル
今一番オススメの英文解釈本がこれ。
タイトルに「はじめの」とある通り、易しい英文で練習できるので英語が苦手な人にぴったりです。
英文解釈の本は理屈や思考プロセスの解説をたくさん載せている本が多いですが、この本はその正反対のドリル型。
説明は最低限度にして反復練習を重視。考えて判断するというよりも「型」として覚えてしまおうというやり方。
今の大学入試は平易な文を大量/高速処理させる方法に向かっているので、そのトレンドに合っているとも言えます。
逆に国公立志望の人など、
・抽象度の高い英文が出題される
・和訳や説明問題が出題される
という人は相性△
そういう人はこれから紹介する技術100シリーズなどを使いましょう。
2冊目:入門 英文解釈の技術70
伝統ある「技術100シリーズ」の3作目。
近年の入試傾向に合わせて英文のレベルを落とし、学習項目もさらに絞りこんでいるので学びやすさが格段にアップ。
例題1問+類題1問の構成で、例題にはがっつり詳細な解説がついています。長年愛されるシリーズだけあって解説量と演習量のバランスが良く、誰が使っても一定の学習効果が期待できる本。読み物系の勉強が好きな人、ゴリゴリ演習系の勉強が好きな人、どちらにも使いやすい名著。
シリーズはレベル別に全4冊になっています。
自分の志望校に合わせて少しずつレベルを上げていくと〇
3冊目:大学受験のための英文熟考(上・下)
『ドラゴン桜』の英語教師のモデルとして有名な竹岡先生の著書。
例題オンリーの構成で読み物要素が強い本。
英文を読みながら「どのタイミングでどんなことを考えるか」という読解プロセスの解説が秀逸。
結果論ではなく思考プロセスを多く語っているので「英文の読み方」が身につきやすい本。
関係詞の解説に独自色が強すぎて他の本と併用しにくいのは△。
今の入試トレンドを考えると少し難しめと言えるかも。
関関同立・国公立以上のレベルを志望している人にオススメ。
(上下巻ですが、上巻だけで何となることも多々あります。まずは上巻だけやってみて様子を見るのも〇)
番外編:ビジュアル英文解釈(上・下)
「受験英語の神様」伊藤和夫先生の伝説的名著。名著中の名著だが古すぎて誰も使ってない(笑)
収録されている英文も古いし、解説もレイアウトも淡泊なので時代に合わない。
ただ、内容は抜群で1冊やり切れば力がつくことは間違いない。実は今の時代にも十分通用すると思ってます。
一度学習した項目が後の単元でも自然と再登場するという「らせん型」の構成なので読み物系なのにドリルの反復練習のような効果が出せるのも特徴。
人とかぶるのが嫌で、尖った勉強がしたい人にオススメ。
参考書は正しく使ってなんぼ
いかがでしたか?
いつも記事が長すぎると指摘されるので、今回はぐっと堪えてめちゃくちゃ簡潔に書いたつもりです。
本当はそれぞれの本についてもっと語りたいことがあったんですが、それは授業で個別に語ることにして。
確かに参考書にはそれぞれに特徴があって、適切な選び方をすれば勉強の大きな助けになってしまうことは間違いありません。
ただ、
「〇〇を志望している人にはコレ」
「こういう人にはこの参考書」
みたいな情報ばかり見ていると、正しい本さえ選べばその参考書が成績を上げてくれるように錯覚してしまうことがあります。
特に勉強に自信がない、受験に対して切羽詰まっている人ほど魔法の杖を探してしまうもの。
ですが、勉強とは本来
「何をやるか」
と
「どうやってやるか」
の掛け算です。
参考書とはつまり「何をやるか」にあたるワケですが、これと同じくらい大事なのが「どうやってやるか」という視点です。
例えば今回挙げた英文解釈の本でも、平易な英文を扱った『はじめの英文読解ドリル』と、抽象度が高めな英文を扱う『英文熟考』では適切な取り組み方も、陥りがちな間違いも全然違います。
良書と呼ばれる本を使えば、学習者はただ1ページ目から一生懸命やってればいいなんてことはありません。
大切なのは
・自分がどんな力をつけたくてその学習をするのか自覚しておくこと
そして
・狙った力を鍛えられているか、学習中に常に自分をモニタリングすること
です。
メタ認知能力と呼ばれるこれらの力が基盤にあって、初めて参考書は正しい使い方をすることができ、真価を発揮します。
決して参考書任せなになることなく、目的意識を持って主体的に学習に取り組めるようになりましょう。