今回は僕が指導の中で生徒たちに語っている「読書論」を紹介します。
塾生の皆さんはご存知の通り、ウチには特注の立派な本棚があり、僕は棚づくりに並々ならぬ情熱を注いでいます。
しかも本棚の50%は勉強以外の本で埋まっており、さらにそのほとんどは小説です。
小説以外にも生徒が興味を広げたり、キャリアをイメージするきっかけになるように色んなジャンルの本を置いていますが、やはりウリは小説。
ということで、今回は小説を全力でプレゼンする記事です。
先に断っておきますが、読書なんて娯楽としてするものなので、楽しければ何を読んでも構いません。
読んでいるものに上下も尊卑もありません。
あくまで僕が小説好きだから、自分がたくさん小説を読んできた中で思う
小説を読むことの効用
を生徒たちにも知って欲しくて語っている内容です。
一般論としての読書の効用
そもそも小説に限らず、読書をすることにはたくさんの効用があることが知られています。
- 知識が増える
- 語彙力/読解力がつく
- 想像力/共感力がつく
とかは誰しも思いつくところですが、他にも
- ストレスを軽減する
- 記憶力が高まる
- コミュニケーション能力が高まる
なんてのもあります。
ちなみに読書のストレス軽減効果は音楽・コーヒー・散歩・ゲームよりも高いです。
ただ「効用」ってのはつまり「実利」ですよね。
本質的に読書が「好き」とか「楽しい」ということではなく、ある種のエクササイズとして効果の話。
そして、そうやって読書に実利を求める人は、あんまり小説は選びません。
「どうせ読むなら、役に立つことが書いてある本がいい」
といって、ビジネス書とか啓発書とか業界本とかを選ぶ傾向がある気がします。
そういう人たちにとって小説とは「作り話」で、非現実的なただのエンタメという認識なのだと思います。
ですが、今回僕が主張したいのは
実利を求めている人こそ小説を読め
ということです。
フィクションこそ最もリアル説
小説は確かに作り話です。
でも、作り話=非現実でしょうか?
ひとつ、面白い本を紹介します。
この本はサッカージャーナリストの木崎伸也さんという方が書かれた小説です。
お話自体はサッカーファンだからこそ楽しめるというものなので、興味ない人は読まなくていいんですが、面白いのはこの本が書かれた経緯。
木崎さんはサッカージャーナリストであって小説家ではありません。
ではなぜ、小説を書いたのか?
それは、真実を書くためです。
「ん?」と思いましたか?
ジャーナリストなんだから、真実は記事として書けばいい。
小説は作り話なんだから、真実ではないでしょ?
しかし、ジャーナリストの取材は、選手や協会との関係性によって成り立っています。
「悪い部分」を知ったとしても、それを記事にしてしまうと関係性を損ねてしまうかもしれない。
取材禁止にでもなったら最悪です。
そこで木崎さんが取った手法が「フィクションとして書く」です。
サッカーファンが読めば登場人物のモデルが誰かすぐにわかります。
でも本名じゃない。
ドラマなどでも「あくまでフィクションです」ってテロップが出ますが、それを逆用するようなアイデア。
これは極端な例ですが、僕は
フィクションだからこそ真実を描ける
というのが、小説の魅力のひとつではないかと思っています。
真実を真実として書くと、角が立ちます。
そもそも、ある人にとっての真実が、みんなにとっての真実とは限りません。
例えば百田尚樹さんが書いた『殉愛』という小説は亡くなったタレントのやしきたかじんさんをモデルにしたノンフィクションで、百田さん自身は取材に基づいて真実を描いていると主張されていますが、関係者の方から虚偽であると訴訟を起こされています。
また、塾業界でも大ヒットした『ビリギャル』。
この本自体は多くの受験生たちが希望を持てる素晴らしい本です。
逆に言えば
受験生たちが希望を持てるようにエピソードを抽出した話
でもあります。
別にこれらを作為的であると非難したいわけではなくて
本というのは、目的を持って書かれている
という一般論です。
ノンフィクション、ビジネス書、啓発書、そして教育本も。
著者は多くの利害関係の中で、主張を書かなければいけません。
誰かに得をさせ、誰かに損をさせる。
誰かを肯定し、誰かを否定する。
スタバの経営戦略を書いた本に、同じ戦略で潰れた店の話は出てこないし、
「自責」の大切さを説いた啓発本に、自責のあまり鬱になった人の話は出てきません。
現実を書いた本は、現実のすべてを書いたわけじゃないということに注意しなければいけません。
小説に描かれる真実
その点小説はまず、利害関係者が少ないです。
というか、ないです。
登場人物は全員フィクションなので。
だから誰にも遠慮、容赦することなく真実を描き出すことができます。
僕はこの
フィクションこそ最もリアルである説
を推してます。
例えば
「倍返しだ!」
でおなじみの半沢直樹シリーズは、著者の池井戸潤さんが元銀行員ということで、銀行の闇の部分がリアルであると評判ですし
最新作の『イン・ザ・メガチャーチ』が話題の朝井リョウさんはどの作品も時代を鋭く切って、そこに関わる人々の心理を
「本人よりも解像度が高いんじゃないか」
ってぐらいに描写します。
ちなみに朝井リョウさんの『何者』は就活生の心理を、これまた本人よりもよくわかってるんじゃないかってぐらいに描写しているので、高校生や大学生は読んでみると良いと思います。
僕の好きな辻村深月さんの『傲慢と善良』も、婚活する人の心理をグロテスクなぐらい深く描写していて
「本に殺されるかと思った」
という人が続出する騒ぎに(笑)
どうですか?
もしこれらを「実在の人物について書いたノンフィクション」として出版するなら、本当にありのままを全て書いて出版できると思いますか?
作り話=非現実ってわけじゃないと、わかって頂けたでしょうか?
これも生徒によく言ってますが、
誰しも、人には言えない考えや気持ちって持っているものだと思います。
逆に、誰かにわかってほしいと思っていても、言葉にできない感情もあると思います。
自分のことなら当然よく知っていると思いますが、他人のそんな内面に出会う機会が、人生でどれだけあるでしょうか?
他人と深い関係性を築けるコミュ力おばけなら、本を読まなくても経験するかもしれません。
ものすごく共感力が高い人なら、直接話を聞かなくても想像し、感じ取れるのかもしれません。
でも、例えば僕のような、基本的に自分さえ良ければいいと思っているウルトラ自己中野郎なんかは小説でも読まない限り「人」の内面や背景まで知れることはないのです。
小説は、社会や、そこに住む人々の内面を、フィクションだからこそリアルに描ける。
これこそが僕が思う小説の面白さであり、小説を読む意味です。
小説は複雑なものを複雑なままに描く
現実は複雑です。
「こうすれば成功する」
みたいな必勝法はありません。
小説というものは、利害や目的から自由であるがゆえに、物事を単純化したり、特定の主張や方法を正当化する必要がありません。
だからこそ、現実の複雑さを、複雑なままに描くことができる稀有な存在と言えると思います。
僕は生徒たちに、そんな複雑な現実に対峙する力をつけてほしいと思っています。
安易に単純化して安心するのではなく、
必勝法や成功法則を探し回るのでもなく、
「正解はない」という不安と同居しながら世界をじっと見据える力をつけてほしい。
それが本当の意味で社会でやっていく力だと思っているし、
それを養ってくれるのは、むしろ小説なのではないか
なんてことを思っているわけです。
何を読めばいいの?
小難しい話が続いたので、
今さら手遅れかもしれませんが、ここからはカジュアルな内容です。
生徒に読書論を語ったときによくある質問が
「何を読めばいいですか?」
です。
これは本当に
「なんでもいい」
が答えです。
読書に自信がない人は子供向けの小説でもいいです。
ミステリばかり読んでもいいし、恋愛小説ばかり読んでもいいでしょう。
家にある本、読みやすい本、話題の本、なんでもOK。
で、これは僕の肌感覚ですが、とりあえず200冊読んでください。
200冊までは何を読んでも大差ないと思います。
そこからは自分の好きなジャンルを特定しにかかったり、あえて読書幅を広げてみたり、意図を持って選ぶのも良いでしょう。
オススメが欲しい人は授業の時にリクエストして下さい。
その時に好きなマンガやアニメ、映画なんかを教えてくれると助かります。
僕は選書も好きなので、趣味や性格、読解力に合わせて選びます!
保護者の方ならLINEでのリクエストも歓迎です!
神戸でオススメの本屋さん4選
選書リクエストは歓迎ですが、本はやっぱり本屋で買ってほしいですね。
自分に合った本を選ぶなら、本屋で実際に手に取ってみるのが一番です。
週に1度は本屋に行かないと死んでしまう病気を抱えた僕がオススメする本屋さんを4店舗紹介します!
1.井戸書店
板宿駅前の小さな本屋さん。
井戸書店さんの選書や棚つくりのセンスが僕は大好きです。
読書慣れしていない人は、大型書店は広すぎて逆にどこを見たらいいのかわからないそうです。
そういう人こそ、井戸書店さんのような町の本屋さんに行った方がいい。
すぐに見て回れる面積の中に、面白い本が溢れています。
板宿の生徒はちょっと本を読んでみようかなという気になったときにすぐに立ち寄れる立地の良さもあります。まさに「本と出会える場所」です。これから紹介する大型書店も良いですが、こういう町の本屋さんがあるってすごく豊かなことですよ。
2.ジュンク堂三宮店
品揃えで言えばやはりジュンク堂。特にセンター街にある三宮店は4フロアもあって取り扱いの冊数は群を抜きます。
特におすすめなのが2Fの文庫本の奥にある文芸のコーナー。ハードカバー(表紙が固くて、大きい本)がたくさん置いてあります。読みやすいのは文庫ですが、ハードカバーはなんといっても表紙がカッコいい!
思わずジャケ買いしたくなる本に出会えるでしょう。
ちなみにジュンク堂は全国大手の本屋さんですが、発祥の地は神戸です。
3.ジュンク堂明石店
不思議な魅力があります。棚づくりが上手いのかな?
ジュンク堂明石店に行くと、なぜか良い本に出会えるんですよね。
話題の本、まだ認知度は低いけど面白い本、古典的名作なんかがすごくバランスよく並べられていて、たくさんの本があるんですが、なぜか見やすい。
書店員さんがつくりポップなんかも魅力的で、実はすごい本屋さんなんじゃないかと睨んでいます。
明石駅前は再開発ですごく綺麗になったし、図書館もマクドもカフェもあって勉強する場所としても打ってつけです。
休みの日に電車で明石まで行って、本屋寄って、勉強して帰るとか、最高じゃないですか。
4.喜久屋書店 神戸南
イオンモール神戸南に入ってる本屋さんです。
元々良かったですが、2F→3Fに場所を移して改装オープンして、さらに魅力が増しました。
落ち着いて本を吟味するのに最適なゆったりとした店内。
ファミリー向けのモール内にある本屋さんだけあって、子供が来ることを意識した配置になっている気がします。(多分棚も低い…?)
話題の本や読みやすい人気作が平積みでフィーチャーされていることが多く、本に詳しくない人にもやさしい。
板宿からは頑張ればチャリで行ける(らしい)し、モール内には自習室もあるので学生向きなのでは。
ちなみに僕も家から近いのでよく行きます。
まとめ
いかがでしたか?
また書きすぎてしまいしたが、要するに
小説を読め
なぜなら、小説こそが社会や人間のリアルを描写してるから
読むものは何でもいい
わからなかったら聞いてくれ
でも、本当は本屋に行って欲しい
です。たった5行のことを伝えるのに4700文字使った自分に衝撃を受けています。
ここまで読んで頂いた方はありがとうございます。
現実に成功法則はないと書きましたが、無理やりそれをひねり出すなら
「小説を読む」
は割と上位にくると思います。
これを機に、ぜひ読んでみて下さいね。
