小論文に必要な力

まずは小論文にはどんな力が必要なのか分析してみましょう。
「自分は何の力をつければいいのか」
を意識して練習すると効果が大きく変わります。

小論文に必要なのは大きく分けて
構成力表現力です。

構成力とは「どんな内容をどんな順番で書くか」を考える力です。
文章(日本語)にする前の、意見や思考といった抽象的なレベルで内容を考えます。
知識力(各テーマについての背景知識をどれだけ持っているか)や論理的思考力が主です。

そして表現力は「その内容をどんな文で表現するか」を考える力です。
日本語力、つまり語彙力や文章力などのことです。

この2つの力のうち、受験生がトレーニングすべきなのは主に構成力の方です。
「小論文が書けない」
と言っている人の大半が構成が甘い人です。

構成をつくり込めていない、内容に論理的なつながりがない、こういった状態で無理に指定の字数まで文章を書こうとするから難しくなります。

構成力と表現力のうち、主に構成力を高めるトレーニングをする。

これが小論文対策の基本です。

※大学によっては課題文を読んで自分の考えを書くスタイルの問題もあります。その時には読解力も必要になります。

小論文の力をつけるトレーニング

小論文が上達するには、とにかく書くことです。
ほとんどの人は単純に経験値が低すぎるので、ただ書きまくるだけでもある程度上達します。

(いきなり書き始めるのが大変な人は、いくつか例文を見てからそれを真似するように書いてみましょう。
以下のサイトに例文がいくつも載っているので参考にして下さい。)

とはいえ、「書きまくる」よりもさらにトレーニングの質を上げるなら以下のことを実践してみましょう。

①1つのテーマを何度も

最初は量より質です。
ひとつ書き上げたら添削を受けて、指摘された箇所を直して再度添削、それを繰り返して
「本番でもこれぐらいのヤツが書ければ大丈夫」
というところまでいったら次のテーマに移ってOKです。

自分で書いたもののどこに問題があるのかわからないまま、やみくも量だけこなしても低クオリティのものが量産されるだけで成長幅が少なくなってしまいます。
最初は1テーマずつじっくり時間をかけて仕上げましょう。

②字数多めで書いてみる

例えば600字指定の小論文を書けと言われた時、多くの人がどうにか600字に到達させようと無理矢理書く内容をつけ足したり、わざと回りくどい表現をして字数稼ぎをします。

これをやると情報密度の低い、スカスカな内容の文になってしまいます。

最初は字数オーバー気味に構成を考えて、そこから無駄を削って無理矢理字数内に収めるという考え方の方が密度の高い、良い文が書けます。
練習段階では指定字数に+10~20%ぐらいを目安に書いてみましょう。

③打ち込みで書く

本番直前以外はスマホやタブレットに打ち込むのがオススメです。
紙に手書きしてしまうと、既に書いた文を大幅に修正するのが難しくなります。
あまり何行も消して書き直したくはないので
「どうにかこれまで書いたことに帳尻を合わせる形で続きを考える」
という心理になってしまいます。
これだけクオリティを上げることに意識を使えていないので、効果は低くなります。

打ち込みがすごく苦手な人は手書きでも良いですが、その時は書いた文を消すことを厭わないようにして下さい。何回でも新しい原稿用紙に最初から書き直すぐらいの気持ちでやりましょう。

④色んなテーマに触れる

慣れてきたら質から量にシフト。
制限時間も意識しながら色んなテーマで書いてみましょう。
(過去問の傾向でテーマが予測できる場合は、よく出るテーマ中心で良いです)

小論文の力をつける習慣

小論文に限らず、勉強全般でそうですが、トレーニング以上に影響を与えるのが習慣です。
どんな学力も勉強時間でつける力より日常の習慣によってつく力の方が遥かに多いです。

ということで、小論文の力を養うための習慣も押さえておきましょう。

①読書

いわずもがな。
特に小論文対策には新書がオススメです。
少し大きめの本屋には新書コーナーがあるので、そこで気になるタイトルを探してみるのが良いでしょう。
もちろん図書館などを活用しても構いません。

「新書ってなに?」
って人はこちらのリンクを

ちょっとしたスキマ時間には本を読むという習慣をつけましょう。

②主張を持つ

小論文は主張から始まります。
賛成か反対か。できるだけ「本音」で書く方が書きやすいでしょう。
本音で書けば、自分の中の感覚を言語化するだけで良いからです。

そのためには、普段から目にするテーマについて自分の主張を言語化するクセをつけましょう。
例えば街を歩いていて
「ずいぶん外国人観光客が増えたなぁ」
と感じたら
「外国人観光客が増えることに賛成か反対か?」
を自分に問いかけてみましょう。

頭で考えるというよりも、自分の感覚を探るようなイメージです。
良い印象を持つか、悪い印象を持つか。
良い印象なら「外国人観光客を増やすべきだ」
悪い印象なら「これ以上増やさないようにすべきだ」
があなたの主張です。

③リサーチする

「主張を持つ」とセットにして下さい。
主張を持つことは大事ですが、素人の感想レベルの主張でとどまっていては質は低いままですよね。
リサーチをすることで、そのテーマについての背景知識や、実際に社会でどのような議論がなされているか、論点はどこか、それぞれの主張は何かなど、たくさんのことを知ることが出来ます。

ここで注意点がひとつ。
先にリサーチするのはやめて下さい。
自分の主張を持つ前にリサーチをしてしまうと、調べたいくつかの主張の中から自分が賛同できるものを選び、それを自分の意見のように錯覚してしまいます

これは勉強した感じがするだけで、実際には成長はほとんどありません。

誰かの意見に賛同することと、自分で意見を考え主張することは全然別物です。

下手な錯覚を起こさないためにも、必ず自分で主張を立ててからリサーチをするようにして下さい。

授業では

授業で小論文を指導する際は

・構成のつくり方(論理的思考のやり方)
・情報密度の高め方

この2点を中心に添削&アドバイスします。

お手本として構成を書いてみたり、文章を書いてみたりもするので、自分に何の力が足りなくて、どこを目指せば良いのかリアルにイメージできると思います。

↓こんなオリジナルプリントもつくってみました。

おまけ

「主張を持つこと」
これは社会でずっと必要性が指摘され、いまだに苦手な人が多いことです。

自分の考えが持てない。自分の意見が出せない。

それでも「出せ」と言われたら

リサーチして、誰かの主張をあたかも自分の主張かのように語ってみることしかできない。
場合によっては、本人すら「借り物の考え」を「自分の考え」だと錯覚していることすらあります。

これは、特にビジネスの世界においてはとんでもなく大きなハンデです。
学歴とか能力とか、技術とか経験とか、そういうのが吹き飛ぶぐらい不利になることがあります。

たしかに、主張をするということは、リスクがあります。

まず、敵対者をつくるかもしれない
どのような主張でも、それに対して、損をする人、傷つく人がいます。
そういう人を前にしても
「それでも私はこうすべきだと思う」
と主張するのは怖いことです。
嫌われるかもしれないし、批判されるかもしれません。

もうひとつ、自分が否定されるかもしれません
これは勉強でもそうですが
「答えはAだと思う」
とはっきり主張すると、実際の答えがBだった時にあなたは間違えた人になります。

「Aだと思うけど、どうかな。Bもあるかな」
と曖昧なスタンスを取っていれば、明確に間違えた人になることはありません。

間違えたくない。失敗したくない。
そういう感情が強い人は明確な主張を避けます。
もしかすると、たくさん怒られ、否定される中で
「間違い・失敗=悪」
「できる人であるべき」

という観念を教育されているのかもしれません。

これが仕事の世界では大きなハンデになってしまうことは少なくありません。

だからこそ、小論文の勉強は受験勉強を越えた価値があります。

小論文の練習では、あなたが何を主張しても誰も敵に回しません。
知識不足で荒唐無稽な主張をしても、誰にも迷惑を掛けません。

いつかあなたは、社会で何かを主張しなければいけない立場になるかもしれません。
誰かを敵に回すことになるかもしれません。
批判を受けることになるかもしれません。
自身の無能を晒すことになるかもしれません。

だから今のうちに失敗慣れしておきましょう。

「将来失敗しないように、力をつけておこうね」
なんて甘いことは言いません。

何かに挑戦する以上失敗は避けられないので。

そうではなく、ちゃんと失敗慣れをしておくこと。

怖くてもちゃんと自己表現しましょう。
常識も教養もなく、構成も下手で、表現力も乏しい。
失敗としか言いようのない小論文をたくさん書きましょう。

そうして
「失敗はするけど、失敗しても実はたいしたことない」
ということを学んで下さい。

小論文という課題は、その練習にうってつけです。

大学受験は国策として推薦入試の割合も増やしており、小論文ができると受験戦略の幅も大きく広がります。受験にも役立つし、社会に出ても役立つ。一挙両得の小論文に挑戦してみましょう!