今日は授業で集中力について話すことが多かったので、このテーマで書いてみます。

集中力なんてない

「集中力がないんです」
という相談を良く受けます。

たいていは、話を詳しく聞くと
・勉強に入っていけない
・勉強し始めてもすぐに他のことに意識が取られる
みたいなことです。
もちろん原因は人によって様々なんですが、大抵の場合、こういう人は「集中」というものへの認識が間違っていることが多いです。

そして誤った認識をしてしまう原因は「集中力」という言葉にあると僕は思っています。

「集中力」なんて言葉を使ってしまうと、まるで
集中力がある人はどんな場所でどんな課題をやっている時でも集中できるみたいな印象を持ってしまいます。
ですが、そういう人は極めてまれです。
腕力がある人が重たいモノを持ち上げることができると同じ感覚で使うべき言葉じゃないんです。

例えば、この文章を読んでいるあなたは、今、足の親指が上を向いているはずです。

 

 

 

 

 

 

すいませんウソです。

でも、今あなたは足の親指に意識を向けたと思います。
言い換えれば、この文章を読むという集中が途切れたということです。

こんな感じで、集中というのはあくまで条件次第で自然に発生したり消滅したりするものであって「集中力」なんていう能力によって維持しているものではないんです。

「集中力」なんてない。
少なくとも「能力」ではない。
集中できることにも、集中が途切れることにも特定の条件があります
その条件は人によりますが、自分が集中できる条件を知り、意図的にその条件を整えることができれば、たいていの「集中力がない問題」は解決します。

スイッチと強度と持続時間

集中できる条件を考える前に、まずは自分の「集中」について、しっかりと観察できるようになる必要があります。
正式な用語ではありませんが、僕が自分の仕事や勉強に集中できるかどうかを考える時の3つの観点を紹介しておきます。

スイッチ

集中していない状態から、集中している状態への切り替えのことです。
切り替えがスムーズなら「スイッチが入りやすい」
切り替えがやりにくければ「スイッチが入りにくい」
と呼んでます。

強度

例えば僕は数学の問題を解く時などは、1つの問題に対して数式を立てて計算したり、図形的に考えてみたり、グラフで考えてみたりと色々なアタマを使います。没入感と共に1つの問題で頭のメモリがいっぱいになる感覚です。
こういう状態を僕は集中の強度が高い状態と呼んでいます。

逆に法律関係の勉強をする時はとりあえず文字に目を通してはいるものの、内容が理解・想像できなくてあまりアタマが働いていない感覚があります。そういう状態は集中の強度が低い状態です。

集中の強度が低いと、ちょっとしたことに気を取られやすく、集中がすぐに途切れます。

感覚的ですが、自分の集中の強度を0~100で数値化して捉えています。

持続時間

集中した状態が何分(何時間)持続するかを集中の持続時間と呼んでいます。

こんな感じで自分の「集中」について
・スイッチが入りやすいか
・強度はどれくらいか
・持続時間はどれくらいか

という3つの観点で把握できるようになると、自分が集中できる条件も発見しやすくなります。

集中力を左右する4要素

では、集中できる条件を考えていきましょう。
こちらも3つの項目を紹介します。

場所

どんな場所でやるのかは集中に大きく影響します。
カフェなのか、学校の自習室なのか、図書館なのか、ファミレスなのか、家なのか。
家でやるなら、リビングなのか、自室なのかなどです。

この「場所」については考え始めると深くて面白いので、後でもう少し詳しく書いてみようと思います。

課題と方法

どんな課題(教材)をどんな方法で勉強するのかということです。

例えば課題について、適性よりも明らかに難しい課題を選んでしまうと、全く勉強に入っていけません。
逆に簡単すぎる課題を選んでしまうと、最初は気分が良いかもしれませんが単調すぎて集中が持続しなくなってしまいます。

また、方法によっても変わります。
例えば英単語帳という課題を選んだとします。ただ眺めるだけの勉強をしてしまっては、10~15分ぐらいで眠たくなってしまいます。
ですが、赤シートで隠してテンポよく答えていくような方法を採ったり、5分ごとに時間を区切ってチェックテストのようなことをやってみることで集中の強度と持続時間を高めることができます。

コンディション

体と心のコンディションです。
激しい運動をして疲れていたり、睡眠不足・栄養不足だったりすると集中できません。
またストレスが溜まっていたり、強い不安や心配を感じているような状態では集中できません。

自分の「集中」の状態をスイッチ・強度・持続時間で評価して、上手くいっている時には場所・課題/方法・コンディションがどうなっているのかを観察することで、自分が集中できる条件を知ることができます。
最初は難しく感じるかもしれませんが、慣れてくると自然と自分の集中状態をモニタリングできるようになるし、自分が集中できる条件も割と簡単に整えることができるようになります。

塾生の皆さんは授業時にもっと詳しいアドバイスもしているので、興味がある人は声を掛けて下さいね!

最後におまけとして「場所」について少し掘り下げてみたいと思います。

場所の持つ情報

おまけとして、場所が持つ情報というお話をしてみたいと思います。

例えば自宅のリビングを想像してみて下さい。
セットで何か動作が浮かんできませんでしたか
僕の場合はご飯を食べる・動画を見るなどです。
家族との団らんの様子が浮かぶ人もいるでしょうし、筋トレが浮かぶ人、勉強が浮かぶ人もいるでしょう。

自分がよくいる場所には、自分がその場所でいつもしている動作が情報として染みついています。

では、次は国会議事堂を想像して下さい。
外観じゃなくて、部屋です。採決とかしてるあの部屋。
ニュースでよく見るヤツです。おじさんたちが集まっているあの場所ですね。
セットで浮かんでくる動作は皆無だったと思います。

当たり前ですが、自分がいったことのない場所には動作の情報は記録されていません

これが場所が持つ情報という考え方です。
僕はこの考え方を利用して、自分の集中をコントロールしています。

場所が持つ情報に従う

基本的に、ある場所が既に動作の情報を持っているとき、その場所で別の動作をするのは大変です。
例えば僕にとってリビングで勉強するのは大変です。リビングは既に食事・遊びという情報を持っているので。だから僕はリビングで勉強する気はさらさらありません。
勉強は、勉強という情報を持っている場所でします

僕にとっては塾や、シェアオフィス、行きつけのカフェなどが勉強という情報を持った場所です。
特に三宮にはいくつも行きつけのカフェがあって
・小説を読むカフェ
・インプット系の勉強をするカフェ
・ガシガシ書いて計算したりするタイプの勉強をするカフェ

みたいな感じで役割を分けていて、休日はそれらをハシゴすることで高い集中状態を6時間ぐらいキープできます。

白紙の場所に情報を書き込む

ほとんどの人にとっての国会議事堂と同様に、まだ自分がいったことのない場所には何の情報も記録されていません。
だから意図的にそこに「〇〇する場所」という情報を書き込むことができます。

もし勉強できる場所を探しているのなら、自分が行ったことがない場所に行ってみて、そこが心地よければ
そこで勉強以外の動作はしないようにして下さい。スマホは電源を落としておくとか。30分とかの短い時間で良いので、勉強だけをして帰って下さい。それを4,5回繰り返します。
そうやって白紙の場所に自分が狙った情報を書き込んでおくことで、その場所を訪れたら自動的に集中できるようになります。

環境は自分でつくるもの

今回は場所にフォーカスして書いてみましたが、集中できる条件を揃える方法はいくらでもあります。
大事なのは、環境は自分でつくるものという意識を持つことです。

集中できないのは集中力なんて能力のせいではないし、ましてや他者や自分が置かれた状況のせいではありません。あくまで自分次第です。
だからこそ、僕は方法を提案することはできても、誰かを集中させることはできません。
学習法と同じく、主体性を持って試行錯誤をする姿勢こそが全ての出発点です。

可能性はいくらでもあるし、だからこそ楽しい。
能力のせい、人のせい、環境のせいにする前に自分自身に目を向けてみましょう。
その方がきっと楽しいはずです。

楽しみながら、自分が成長できる環境をつくっていきましょう。