「数学の参考書って、まずどれからやればいいですか?」
「学校で配られてるヤツあるんで、これでいいですか?」
「この本SNSでオススメされてたんですけど、買った方がいいですか?」
4月から大学受験に本腰を入れる人も多い中、こんな相談をよく受けるようになりました。
数学の参考書は何を使うべきか?
それを質問する人が本当に知りたいのは
使う本ではなく、受験までの道筋だと思います。
入試まで、何をどうやって勉強していけばいいのか?
これがわからないと不安になります。
不安になった結果、オススメの参考書を求めたり、予備校のカリキュラムを求めたりします。
結局
レールを敷いて欲しい
ということなのだと思います。
その不安も要望ももっともだと思うのですが、
一方で、誰かに敷いてもらったレールを盲目的に歩く人は成績が上がりにくいというのもまた事実です。
学校や予備校のカリキュラムがどうであれ、
使う参考書が何であれ、
大前提として必要なのは受験生自身が勉強の進め方についてよく理解しておくこと。
そして、その場その場で適切な自己判断ができるということです。
今回は大学受験生が、入試までの勉強の進め方を理解するための記事を書きました。
参考書を買う前に、
予備校のコースを決める前に、
まず自分自身の頭の中に入試までの地図を描いてください。
ちなみに基本的な進め方、考え方は文系・理系共通です。
例として挙げる問題は文系の人でも経験するものにしていますが、理系の人は数Ⅲでも同じ考え方をすると思ってください。
また、参考書については以下のページでおすすめを挙げています。
記事の途中途中にもリンクを貼りますが、この記事を読んだ上で見てもらえると、自分に必要な参考書がわかると思います。
数学の勉強法の誤解
まず、数学の勉強というと
「最初に基本レベルの問題をやって、次に標準レベルの問題をやって、応用レベルに進んで、そこまでやれば力がついてるから、過去問が解ける」
みたいに、段階的に力をつけていくようなイメージをしている人も多いかもしれません。

でも、少し考えてみて下さい。
「力がつくってどういう状態ですか?」
「基本レベルってどういうものですか?」
基本=かんたんなヤツ
応用=むずかしいヤツ
むずかしいヤツが解ければ、力がついたってこと。
こんな感じの認識なら、頑張って勉強しても、なかなか力はつきません。
正しい捉え方はこんな感じ

ここからは、捉え方を修正しながら、正しい勉強法を理解していきましょう。
早く過去問がやりたい
一つ目のポイントは、
過去問は最後にやるものではなく、最初にやるものだ
ということです。
勉強が上手い人ほど早く過去問に取り組みたがります。
それは
何がどう出題されるのかを把握してないと、勉強の感覚が掴めないから
です。
もちろん取り組んだところで解けはしません。
でも、自分に何が足りないか、どんな力が要求されているかの感覚を掴むことができます。
それをもとに、自分が足りない力を補強するように勉強する。
補強したら、また過去問を解いてみる。
すると別の弱点が見つかるので、またそこを補強する。
これの繰り返しです。
一見すると予備校のカリキュラムに従っているだけに見える生徒も、実は模試などでその感覚を掴み、それと照らし合わせながら授業を受けています。
逆に言えば
最初に過去問を解けと言われたから、とりあえず解いてみた
というだけでは不十分ということです。
感覚を掴むために解いているのだから、考えながら、分析しながら、感じ取りながら、自分の感覚器官をマックスに使って取り組まなければいけません。
とはいえ
よく分析しながら過去問を解け
とだけ言われても困ってしまうと思うので、もう少し詳しく解説します。
問題を3種類に分ける
数学の問題を解くときに、3種類に分けるのが僕のオススメの考え方です。
- 基本問題
- 典型問題
- 応用問題
です。
問題を3種類に分けるというのは、問題を解くのに必要な数学の力を3種類に分けているということです。
過去問を解いた時に、その3つの力のうちのどれが足りなかったせいで解けなかったのかを分析し、自分の補強ポイントを定めます。

それがこの図の意味です。
基本問題の勉強のコツ
基本問題とは
定義や公式をそのまま当てはめたら答えられる問題
だと思って下さい。


こういうやつです。
前者は三角比の定義がわかっていれば、
後者はメネラウスの定理が使えればワンステップで解ける問題です。
この基本問題を勉強すべきなのは
- 公式を覚えられていない
- 公式を使うのに時間がかかる
- 言葉の意味を知らない
- 何を計算しているのか理解していない
これらを感じることが多いなら、基本問題の学習が必要だと思ってください。
オススメの参考書はこちらを見てもらうことにして
基本問題を勉強する時はけっきょく何ができるようになれば良いのかを解説していきます。
1.公式は即答する
当たり前ですが公式を覚えます。
この時
「えーっと…なんだったっけ…たしか…」
となってる時点でダメ。
公式は即答するのが当然だと思ってください。
そのためには、公式自体をどれだけ見ても効果は薄いです。
効果が高いのは
・練習問題を解く
・何度も声に出して言う
です。
どちらもスピードが大事です。
問題を解くにも高速で解く。声に出して言うときも早口言葉のように言ってください。
2.公式を導出する
公式を導出するとは、簡単に言えば
公式を自分でつくれるようになる
ということです。
有名なところでは、三角関数の
・倍角公式
・半角公式
・積和/和積の公式
これらは全て加法定理さえ覚えていれば自分でつくれます。
この導出の学習は、絶対とは言いませんが、できる限りやった方が良いと思います。
導出過程そのものが入試に出ることもあるし、そのままじゃなくても、導出過程で使った考え方やテクニックが出ることもあります。
なにより、与えられた解法を鵜呑みにするようなクセがついてしまうと、考える力が育たないからです。
3.言葉の定義を理解する
公式の習得だけが基本問題ではありません。
数学のことばを正しく知ることも大事な目的です。
有理数ってなに?
微分係数ってなに?
ベクトルの規格化ってなに?
こういった数学の概念をちゃんと理解しておきましょう。
特に共通テストを受ける人は公式の丸暗記だとキツいと思います。
自分が今なにを計算しているのか?
なぜこの計算で求まるのか?
ここまでセットにする習慣をつけて下さい。
本当に数学が苦手で、どうしても概念理解ができない人は先に公式を覚えて、計算だけができる状態にしても良いです。
計算ができるようになった状態で改めて解説を見ると、概念が理解できるようになっていることもよくあります。
典型問題の勉強のコツ
典型問題とは
数学的に定番のテクニックを使って解く問題で、入試での出題頻度が高いものです。
ベタ問と呼ぶ人もいます。

こういうヤツです。
過去問を解いていて
- 解法が全く思いつかない
- 問題を解くの異常に時間がかかる
- 大問の(1)や(2)でつまづく
こういう人は典型問題の勉強が必要です。
数学という科目は、原理上は基本問題が完璧であれば、つまり定義を完璧に理解して、公式を全て覚えていればどんな問題でも解くことができます。
でも、もちろんそれは理想論で、実際には
「こんなん誰が思いつくねん」
って言いたくなる解法もあります。
それに、発想力のある人なら自力で解法を思いつくかもしれませんが、制限時間のある入試の中で、全問それをやってしまうと時間が足りなくなってしまいます。
だから上に挙げたような
・解法レパートリーが少ない人
・発想はできるが、時間がかかりすぎる人
は典型問題の勉強をやりましょう。
勉強するときは以下のポイントを押さえて下さい。
勉強量は人によって違う
典型問題の勉強をどれくらいする必要があるかは、人(性格や思考力)によって違います。
初見の問題に対して、定義をもとに自分で考えることが好きな人は、典型問題の量は少なくて済みます。
逆に考えることが苦手な人は、多くの典型問題を覚えておいて、自分で考える余地を減らす必要があります。
また、志望校によっても違います。
関西なら私立大学は型通りの問題を出しやすい傾向があるので典型問題の勉強が活きやすいし、
逆に共通テストは初見の状況に対する読解力や思考力を問う傾向があるので、典型問題の勉強の効果は(相対的に)薄くなります。
このあたり過去問を解きながら分析が必要です。
自力だと難しいところもあるので、学校や塾の先生の助けを借りても良いと思います。
自分に合った本を選ぶ
勉強量が人によって違うので、選ぶべき本も違います。
こちらで詳しく紹介していますが、典型問題の勉強としてよく使われる本の問題数を比較してみるとこんな感じです。
青チャートが群を抜いて多いのがわかります。
かつては青チャートが定番という風潮がありましたが、実態としてはオーバーワークになっているケースがほとんどでした。
そんな状況を受けて今は流れが変わってきて、150問程度のSuperQuickや基礎問題精講が新たな定番になりつつあります。
僕は普段からミニマムで勉強して、模試や過去問を分析して不足があれば付け足していく勉強を推奨しているので、駿台BASICが推し。
自分の志望校や性格、受験戦略で数学をどこまで重視するか、残り期間はどれくらいかなど、色々な要素がありますから、ここはよく考えて決めて欲しいと思いますが、一応の目安としては
考えるのが好き&共テ重視 ⇒ 駿台BASIC
スタンダードにやりたい ⇒ SuperQuick
(or 基礎問題精講)考えるの苦手だけど上位校を受験 ⇒ 青チャート
ぐらいでいいかなと思います。
考えて、理解して、覚える
典型問題は言ってしまえば解法の暗記です。
ですが、ただ覚えるだけではダメです。
それだと応用が利かない知識になってしまうし、そもそも、たぶん覚えられません。
典型問題を勉強するときも、まずは一度問題を見て自分なりに考えてみましょう。
自力で解法を導き出すぐらいの気持ちでやってみて下さい。
実際に自力で解けたら、その分記憶は強く残ります。
1~3分ぐらい手が止まるようなら、答えを見てしまって構いません。
この時に、手順を丸ごと暗記しようとするのではなく
「ここまでは自分でもわかっていた」
「ここがわかれば、そのあとは自力でもできそう」
という具合に、「自力」の領域をできるだけ広く取れるように、解説を理解しながら読んでいきます。
こうすることで、習得したテクニックをより使いこなせるようになるし、初見の問題への対応能力を磨くこともできます。
即答が原則
公式と同様、ここでも即答できるところまで練度を高めるのが原則です。
問題をみた瞬間に
「あぁ、はいはい、このパターンね。これはこうやって、こうやって、こうやったら解けるやつ」
みたいに頭の中で解法が瞬時に組み立てられるのを目指して下さい。
ちなみに、そのためには必ずしも紙に書いて解く勉強をしなくても良いです。
以下の「リハーサル法」のような勉強法も活用しましょう。
問題を見て、解法を思い浮かべる。
このとき、実際には解かない。計算もしない。
解く流れを頭の中に思い浮かべるだけ。
それを解説と照らし合わせてチェック。
合っていたら次の問題へ。
間違っていたら正しい流れを確認する。
この勉強法をリハーサル法といいます。
この方法を使えば1問1分ぐらいで勉強できるので、参考書の2周目以降に活用しましょう。
応用問題の勉強のコツ
さて、最後は応用問題です。
過去問を解いたときに
- 公式は知っていた
- 解法自体も見たら知っているものだった
- でも、解けなかった
この状況になる人は多いと思います。
特に共通テストや国公立2次の問題で陥りがちな状況です。
まず、定義や公式に問題がなかったのなら、基本問題を勉強しても解決しません。
そして、解法自体も見ればわかるものだったのなら、解法レパートリーの不足でもないので、典型問題でもありません。
けっきょく数学は考える科目です。
入試問題には、何千ものレパートリーがあります。
それに対して、先ほど示した典型問題の数は、チャートでも300ぐらい。
つまり
事前に勉強しておいた知識を当てはめて解く
という方法では無理があるということです。
そこで必要になるのが応用問題の勉強。つまり応用力です。
応用力のトレーニングは、これまでの2つと根本的にまったく違います。
基本問題・典型問題はともにインプット、つまり頭に何かを吸収することが目的でした。
それに対して応用問題はアウトプット。自分が持っている知識や理解をいかに使いこなすかという練習です。
応用力をつける勉強には過去問を使うのが一番良いですが、ただやみくもに解いても効果は薄いでしょう。
以下のポイントを意識して下さい。
問題文と向き合う
当たり前のことを書いていると思うかもしれませんが、これができていない人が多いです。
特に数学が苦手で、それでも学校の定期テストをどうにか乗り切ろうとしてきた人たちです。
こういう人たちは問題を解くときに
覚えた解法のどれにあたるか?
という視点で問題をみるクセがついてしまっています。
でも、数学を勉強する姿勢はそれではありません。
覚えた知識や解法はいったん捨てて、生身で問題文と向き合うということです。
「問題文が示しているのはどういう状況か?」
「何を求めろと言っているのか?」「誘導にはどのような意図があるのか?」
たまたまつけたテレビで流れたクイズの問題を解くような感覚、と僕はよく伝えています。
最初から自分の記憶の引き出しを探しにいくのではなく、あくまでフラットに問題文の意味を受け取りにいく。
その中で公式や解法が必要になれば、そのときに頭から引っ張り出せばいい。
そういう感覚で解くのが応用力をつけるための基本姿勢だと思ってください。
解法の「手前」に注目する
応用問題を勉強するときに、解法は実はあまり重要ではありません。
そもそも解法は多すぎて覚えきれないから応用力が必要という話なので、その勉強のときに解法を覚えようとするのは本末転倒です。
応用問題では、解法そのものではなく
「なぜ、その解法が思いついたのか?」
というところに目を向ける必要があります。
それを本によっては
「発想」と呼んだり
「方針」と呼んだり
「セオリー」と呼んだりしますが
どれも同じことを言っています。
解法を思いつく手前の思考プロセスこそが肝になります。
「問題文をどのように読み、どのように理解したのか?」
「問題文のどの部分から何を連想し、どのように思考を広げ、解法に至ったのか?」
数学のセンスがある生徒は、こちらが何も言わなくても、普段からこのような視点で質問をしてきます。
乱暴な言い方ですが、そのような生徒は何をやってもどうせ伸びるので
「自分の感覚のまま、好きに勉強してくれ」
と言ってます。
でも、苦手な人は自力だとしんどいかもしれません。
問題集の解説には、だいたい解法しか書かれていないので
「どうやってそれを発想したか?」
については、解説と問題文と照らし合わせ、いわば行間を読むように参考書を使う必要があります。
このフェーズでは生身の人間に教わるのが最もコスパが良いでしょう。
自分が解きたい問題を、普通に解けて、その思考プロセスを言語化できるような指導者がいれば話が早いです。
過去問を解いて、発想法がわからないところを言語化してもらったり、お手本で解いているところを見せてもらうと成長が速くなります。
もし参考書でしか勉強できない環境なら
・解法のエウレカ
・New Action Legend
・河合塾 解法のセオリー
などの本は発想法に重点を置いたつくりになっているので、普通の問題集よりは学びやすいはずです。
まとめ

改めて整理しましょう。
まず、大学受験の数学は基本→標準→発展とレベルを上げていく感覚ではなく
過去問を解いてみて、足りない力を補強するというサイクルを何度も繰り返す感覚で勉強するものです。
「足りない力」は
・基本問題
・典型問題
・応用問題
の3観点で分析してみましょう。
公式や定義の理解が不足しているなら基本問題を。
解法レパートリーが不足しているなら典型問題を。
それらは揃っているのに問題が解けないなら応用問題を勉強します。
それぞれの勉強についてオススメの参考書は
こちらにあるので参考にして下さい。
中でも応用問題は過去問で練習するのがベストですが、生身の指導者に相談できる環境がない人は上に挙げた参考書を使ってみても良いかもしれません。
これらの進め方を頭に入れた状態で、まずは分析的に過去問を解いてみて下さい。
そこで得た感覚を基に勉強を進めていけば、参考書や学校や予備校の授業も最大限に活かすことができます。
これはウチの塾のコンセプトでもあるので、何度でも繰り返しますが
あなたの勉強の管理者はあなた自身です。
あなた自身に地図や感覚がなければ、どれだけ優れたサービスも空振りに終わります。
勇気と自覚を持って、自分の感覚に基づいた勉強を身につけてくださいね。
