今回はこの記事の続きです。

前回の内容をざっくり言えば

スマホは頭を使わなくていいようにできてるから、使いすぎると頭がなまる

というものです。

ですが僕としては、これよりももっと深刻な
スマホが学力を下げる理由
があるような気がしています。
(スマホというより、正確にはSNSです)

それは自己肯定感といわれる、メンタル的な理由です。

今回は

  1. SNSはメンタルにどう影響するのか?
  2. メンタル状態は学力にどう影響するのか?
  3. 塾での対応方法の紹介

という3つに分けて解説していきます。

SNSはメンタルにどう影響するのか?

まず、
SNSはメンタルに悪いか?
を考えて活きましょう。

実は研究レベルではSNSがメンタルに悪影響を及ぼしていると言い切れるほどのデータは出ていません

むしろ

SNSを使用している人は幸福度が高く、幸福度につながる交友関係・人間関係、自己肯定、健康においてもより良い状態であった。

SOMPOインスティチュート・プラス SNSと幸福度~アンケート調査結果からの分析~

と報告している研究もあります。
だからSNSが一概に「悪」というわけではありません。

ただ、指導者や精神科医の方のブログなどを見てみると

SNSは自己肯定感を下げる

という主張が多く見られます。
ちなみに僕も現場ではこのように感じています。

少なくとも

SNS上で誰かと自分を比べてしまう

ということは起こりやすいと言えるでしょう。
容姿を比較したり、「いいね数」を比較したり。

「誰かと自分」
あるいは
「理想と現実」
の過度な比較はメンタルヘルスを悪化させます。

今回はこの「比較」がポイントになります。

メンタルは学力にどう影響するのか?

ではメンタルの状態が悪化すると学力にはどう影響するでしょうか?

ここで原因帰属理論という言葉を紹介します。

原因帰属理論は生徒たちの学習を分析する上でめちゃくちゃ大事な理論で、既に何回かブログにも書いているので、ざっくり説明します。

詳しく知りたい方は下図のリンクや、各種ウェブサイトを見てみて下さい。


原因帰属理論とは

「失敗したことを、何のせいにするか?」

を大きく4つに分けた理論のことです。
勉強で言えば

「やり方が悪かった」
「自分は頭が悪いから」
「ヤマが外れた」
「テストが難しかった」

の4つです。
図解すると

京都光華大学 健康学部心理学科HPより引用

この背景にあるのは自己防衛です。

「努力が足りなかった」
「やり方が悪かった」
ということは
「自分が悪い」
ということです。

逆に
「能力が低い」(先天的な意味で)
「テストが悪い」
「運が悪い」
というのは、
「自分のせいではない」
を意味します。

「努力ややり方」に意識を向ければ、次は改善できる希望があるけど、自分が責められるかもしれない。

「それ以外」に意識を向ければ、改善はしていかないけど、一時的に自分が責められることを回避できるかもしれない。

向上心と自己防衛のせめぎ合いが、原因帰属理論の背景です。

メンタルが悪化した人が陥る4つのパターン

メンタルが悪化すると人は「否定」や「批判」に弱くなります。
そしてその状態だと学力的には大変不利になります。

なぜなら「成果を出す」ということよりも、これ以上自分が傷つかないこと、否定されないことが優先になってしまって、学力をつけるための修正や改善に目がいかなくなってしまうからです。

現場にいて、そういう生徒がどのような状態に陥りがちか、4つのパターンにしてみました。

人の目を気にする

「先生や親に怒られない」を優先してしまって、勉強が形だけになってしまいます。

  • 何時間勉強した
  • 何ページ勉強した
  • 提出物を出した

などの「行為」をいわば「批判を避けるバリア」として捉え、バリア集めに躍起になります。
すると肝心の
「何を覚えたか」
「何を理解したか」
に目がいかなくなってしまいます。

シンプル拒絶

黙る、拗ねるなどしてシンプルに拒絶します。

また
「ワークはちゃんとやった」
「提出物は出した」
などの「行為」を主張してこれ以上の攻撃が来ないように防御します。

「人の目を気にする」と行動が異なるだけで、同じ発想ですね。

わかってる人ムーブ

指摘を受けても
「そうですよね。わかってます」
「自分もそう思ってたんです」
という振る舞いで躱します。

少し成績の良いお利口さんタイプに多いです。
ちなみに、脱線ですが塾講師も実はこういうタイプが多いんですよね。

塾講師の中には生徒の前で「先生=わかっている人」として振る舞わなければならないという強迫観念を持っている人も多いので、そういう人はわかってる人ムーブが染みついてしまって成長を阻害してたりします。

言語化が上手いとこっちの自己防衛になりやすいのかもしれません。

他責

「先生がテスト範囲を正しく伝えていなかった」
「授業が分かりにくい」

など、責められるべきは自分ではなく〇〇だ、ということを主張します。

4つのタイプを紹介しましたが、共通しているのは
自己防衛が先にきてしまって、学力的な改善ができる状態にない
ということです。

勉強で怖いのはこれらの状態です。

塾の入会面談のときからこのような図解を使って説明していますが、メンタルの状態(図中ではマインドセット)は勉強法の中でも土台に位置するところです。

その理由の一つが、
自己防衛が先行してしまってはそもそも学習法の改善自体が難しくなるからです。

塾での対応

生徒たちのメンタルの状態はいくつもの環境から影響を受けます。
学校、家庭、友人、部活やクラブ…。

誰かが意図的にメンタルを回復させることができるほど簡単な話ではありませんが、とりあえず僕がどういう意図でどのような対応をしているかを紹介してみます。

悪い点数は笑い飛ばす

僕は基本的に生徒が悪い点数をとっても怒りません。
(怒りを抑えているのではなく、本当に腹が立っていません。)

むしろ

「ハハハ。やらかしたね。」

って感じで笑い飛ばすことが多いです。

これにはもちろん理由があって、点数が低いこと自体を善悪で捉えて欲しくないからです。

子供は、大人のリアクションを見て自分がしたことの重要性を測っている節があります。

ジュースを床にこぼしてしまったとき
モノを壊してしまったとき
何かを伝え忘れたとき

大人が顔面蒼白になって
「これはとんでもないことだ!」
というリアクションを取れば、
「これはとんでもないことなのだ」
と学習します。

逆に笑いながら
「なにやってんのー」
ぐらいのリアクションなら
「たいしたことではないらしい」
と学習します。

自己防衛が強い生徒は、悪い点数そのものに怯えます。
怒られること、否定されることに怯え、自己防衛スイッチをオンにします。
その状態だと学習法の改善まで話を持っていけない

というか、無理やり話を持っていって
「次からはこうしなさい」
と命じてみたところで

「次はこうしないと怒られるらしい」
と受け取られるだけで、
改善のためのアドバイスだとは受け取られず、
指示されたことを表面的になぞるだけの勉強になり、効果を生みません。

ということで

この塾ではどうやら点数が低いこと自体は怒られないらしい

ということを学習してほしいわけです。

僕は点数を笑い飛ばすことで間接的にこれを伝えていますが、
生徒や状況によっては

「俺は君の評価者じゃないから、点数の高い低いで何かを言うことはないよ」
と言葉で説明することもあります。

「敗因と対策は?」

もちろん、笑い飛ばして終了ではありません。
続いてこう聞きます。

「敗因と対策は?」

「点数が高いか低いかはもう過去のことだからどっちでもいい」
「そんなことより、そうなった原因は何で、次どうしようとしているのか教えてくれ」

そういうメッセージです。

そして、「原因と対策」を答えられなかったらときに初めて

「それはダメだよ」

と叱ります。
(強い語気ではないですが)

結局この塾では
何が怒られなくて
何が怒られるのか。
それを学習してほしいのです。

点数が低いこと自体は怒られない。
でも
「そうなったのはなぜだろう?」
「次はどうすればいいんだろう?」

を考えていなければ怒られる。

これをクセづけることで、悪い点数を取った時に
反射的に自己防衛スイッチを入れることを防止し、
原因と対策の検討に目を向ける
ということを習慣化して欲しいと思っています。

何について怒られているのか?

ここまでまるで僕が聖人のように描かれていますが、
全然僕は短気だしキレます。

ただ、キレたときに
「何について怒っているのか?」
をちゃんと伝えることは心掛けています。

「問題が解けていないことを怒ってるんじゃなくて、図を描いて考えてみるとか、自分にできる試行錯誤をやっていないことを怒っているんだ」
ということを伝えます。
(一応言っておくと、それまでの経緯でどのように問題に向き合うべきか再三伝えていた場合です)

昨今人気の
決して叱らない、声を荒げない、ゆるふわやさしい系先生
とは違って、僕は語気を強めないといけないこともあると思っています。

そうしないと重要度が伝わらないと思うからです。
ただその時に
「何について怒っているのか?」
をちゃんと自分の中で整理して、言語化して伝えない限り
「点数が低いことを怒られているんだ」
「問題が解けないことを怒られているんだ」

と受け取られかねません。

そうするとこの記事で描いてきたとおり
余計なタイミングで自己防衛スイッチが入る
ということになってしまいます。

結論:スマホというか、メンタルだ

ここまでをまとめると

スマホ(SNS)には、他者と自分を比べてメンタルを悪化させる傾向が、たぶん、あります。

メンタルが悪化すると、勉強においても自己防衛が先行してしまいます。

誰かからの言葉掛けが自己防衛スイッチを防ぐこともあるかもしれませんが、完全にコントロールすることはできません。

しかし、スマホの使い方そのものもメンタルの問題です。
冒頭で示した研究のようにSNSによって幸福度が上がり、人生を好転させることもあります。

結局は物事をどう捉えるか、つまりメンタル(より正確にはマインドセット)にかかっています。

これを機にスマホとの付き合い方を、
もっと言えば物事の捉え方を改めて考えてみてはいかがでしょうか。